「回数券を作れば、まとまった売上が先に入るしリピートもしてもらえる」——サロンや教室の開業準備を進めていると、一度は検討するのが回数券・チケット制です。ただ、いざ作ろうとすると「先にお金をもらうのに手続きは要らないの?」「有効期限を切って失効させたら怒られない?」と不安になりますよね。
この記事では、回数券を導入するときに知っておきたい法律・ルールの論点を、資金決済法の「前払式支払手段」・有効期限と返金の決め方・前受金の会計処理という3つに整理しました。あわせて、回数券の管理をラクにする予約システムも紹介します。
これから回数券やチケット制を始めたいサロン・整体院・教室のオーナーの方に向けた内容です。なお、この記事は2026年8月時点で公開されている情報をもとにした「論点の整理」であり、税務・法務のアドバイスではありません。個別の判断は所轄の窓口や税理士・専門家にご確認ください。
回数券は法律的に大丈夫?まず押さえたい3つのポイント
結論からお伝えすると、回数券そのものは多くのサロン・教室で広く使われている仕組みです。ただし「お客様からお金を先に預かる」という性質上、次の3つの論点を知らないまま走ると後でつまずきやすくなります。
| 論点 | 関係するとされるルール | 開業前にやっておきたいこと |
|---|---|---|
| 先払いで預かるお金の扱い | 資金決済法(前払式支払手段) | 有効期限の設定と、未使用残高の把握 |
| 有効期限・返金の条件 | 消費者契約法、業種によっては特定商取引法 | 利用規約を文章にして、購入時にお客様へ渡す |
| 受け取った代金の記帳 | 税務(前受金としての処理) | 会計ソフトで前受金として管理する準備 |
ポイントは、3つとも「開業してから考える」より「回数券を作る前に決めておく」ほうが圧倒的にラクだということ。特に利用規約は、トラブルが起きてから作り直すと既存のお客様との条件がそろわず、対応がややこしくなります。
以下、それぞれを順番に見ていきましょう。
資金決済法の「前払式支払手段」にあたる場合がある
資金決済法とは、商品券やプリペイドカード、電子マネーなど「先にお金を払って後から使う仕組み」の取り扱いについて定めたルールです。聞き慣れない言葉ですが、前払式支払手段とは「先にお金を受け取って、後からサービスや商品と引き換える仕組み」のこと。商品券やプリペイドカード、そしてサロンの回数券もこれにあたる場合があるとされています。
自分のお店だけで使えるものは「自家型」、他店でも使えるものは「第三者型」と呼び分けられるのが一般的です。個人サロン・教室の回数券は、自家型に当たると説明されることが多いタイプです。
有効期限6ヶ月以内なら対象外とされている
よく挙げられるのが、発行日から6ヶ月以内の有効期限が付いているものは、資金決済法の前払式支払手段の規制の対象外として扱われるという考え方です。サロンの回数券の有効期限が「3ヶ月」「6ヶ月」に設定されていることが多いのは、この整理が背景にあるとも言われています。
ただしこの整理も、法改正や運用の解釈で変わりうる部分です。加えて、期限が短いほどお客様は使い切りづらくなり、クレームの原因にもなります。規制の話から逆算するのではなく、施術ペースから見て無理なく通いきれる期間かどうかで決めたいところです。
未使用残高が大きくなると届出が必要になる場合も
自家型であっても、一定の基準日時点で使われずに残っている金額(未使用残高)が一定額を超えると、財務局への届出や、預かったお金の一部を法務局に預けておく「供託」といった対応が求められる場合があるとされています。
この金額のラインや手続きの細かい要件は、法改正で変わる可能性もある部分です。一般的な解説では1,000万円が目安として案内されることが多いものの、ここは記事の情報を鵜呑みにせず、未使用の回数券が積み上がってきたと感じた時点で、財務局の窓口や専門家に確認するのが確実です。高額チケットをまとめて販売する計画がある場合は、早めに相談しておくと安心です。
有効期限と返金のルールを先に決めておく

法律の条文よりも、実際にオーナーを悩ませるのはこちらです。「期限が切れた回数券を使わせてほしい」「引っ越すので残り分を返金してほしい」——このやり取りは、ルールを決めていないお店ほど発生します。
有効期限を設けること自体はよく行われていますが、消費者契約法では、消費者の利益を一方的に害する内容の条項は無効と判断される可能性があるとされています。「いかなる場合も返金には応じません」といった一方的すぎる書き方は、いざというときに主張が通らないおそれもあると指摘されています。
規約に書いておきたいのは、最低でも次の項目です。
- 有効期限(購入日から◯ヶ月、など起算日をはっきり書く)
- 期限を延長できるケースと、その申し出方法(妊娠・入院・長期出張など)
- 中途解約・返金に応じるかどうかと、応じる場合の計算方法
- 譲渡(家族や友人が使えるか)の可否
- 紛失時の再発行の可否
- 店側の都合で休業・閉店した場合の対応
- 料金改定があったときの、既存の回数券の扱い
返金の計算方法は「回数券の支払額から、使った回数×通常価格を差し引いた残り」とする考え方が使われることがあります。どの計算にするかは自店の価格設定次第なので、開業前に一度シミュレーションして、納得できる数字になるか確かめておきましょう。
エステ・教室は特定商取引法の対象になる場合がある
エステティックや語学教室、パソコン教室など一部の業種では、一定の期間・金額を超える継続的な契約が「特定継続的役務提供」(一定期間続くサービスを、まとめて前払いで契約する取引の呼び方)として特定商取引法の対象になるとされています。対象になる場合は書面の交付や中途解約時の精算ルールが定められているとされ、回数券の設計にも影響します。
対象になるかどうかは、業種と契約の期間・金額の組み合わせで変わります。エステや教室系で高額・長期の回数券を検討している方は、消費者庁が公開している情報を確認したうえで、お住まいの地域の消費生活センターや専門家に相談しておくと確実です。
回数券の売上は「前受金」から始まる
会計面での注意点もひとつ。回数券を売った時点では、その全額を売上にしないのが一般的な処理です。
たとえば5万円で10回分の回数券を販売した場合、受け取った5万円はいったん「前受金」として記録します。前受金とは、サービスを提供する前にお客様から預かっているお金のこと。会計上は売上ではなく、これから提供する義務が残っている状態として扱われます。
そして1回施術するごとに5,000円ずつを売上へ振り替えていく、というのが基本の流れです。売上はサービスを提供したタイミングで計上するのが原則とされているため、この処理になります。
これをしないと、回数券が売れた月だけ利益が跳ね上がり、施術した月は売上ゼロという実態と合わない帳簿になってしまいます。回数券を始めるのと同じタイミングで会計ソフトを整えておくのがおすすめです。
なお、消費税の扱いや、有効期限切れで失効した分をいつ・どう収益にするかといった判断は状況で変わります。ここは自己判断せず顧問税理士か所轄の税務署に確認してください。会計ソフト選びは個人サロン・教室の確定申告におすすめ会計ソフト3選、申告全体の流れは美容室・サロンオーナーの確定申告ガイドにまとめています。
トラブルを防ぐ回数券運用チェックリスト
日々の運用でつまずきやすいポイントも先回りしておきましょう。
- [ ] 利用規約を紙またはWebページで用意し、購入時にお客様が読める状態にしている
- [ ] 残回数の記録を、紙の台帳だけに頼らず控えを二重に持っている
- [ ] 未使用の回数券の残高(金額ベース)を月に1回は把握している
- [ ] スタッフを雇う場合、期限延長などの例外対応の判断基準を共有している
- [ ] 価格改定時の既存回数券の扱いを決めてある
- [ ] 長期休業・廃業時にどう対応するか方針を決めてある
特に事故が起きやすいのが残回数の管理です。紙のカードだけで運用していると、お客様が紛失したときに残り回数を店側から示せません。「言った・言わない」は関係性を傷つけるので、店側にも記録が残る形にしておきましょう。
回数券の管理がラクになる予約システム
こうした管理を手作業で続けるのは、ひとり営業だとかなりの負担になります。回数券に対応した予約システムを使うと、次の部分を仕組みに任せられます。
| できること | 手作業との違い |
|---|---|
| 残回数の自動管理 | 予約と連動して自動で1回消費。台帳の書き忘れが起きにくい |
| 有効期限の管理 | 期限を登録しておけば、期限切れの判定を自動化できる |
| オンライン販売・事前決済 | 来店前にカード決済で購入してもらえる |
| 規約への同意取得 | 購入ページで規約を提示し、記録として残せる |
代表的な選択肢がSTORES予約とfreee予約です(2026年8月時点)。STORES予約は回数券や月謝(サブスク)の販売に対応しており、無料から使えるプランが用意されています。freee予約も無料から始められ、会計側との相性を重視する方に検討しやすい選択肢です。料金やプラン内容は変更されることがあるため、最新の条件は各公式サイトでご確認ください。
両者の違いや回数券・サブスク対応の詳しい比較は回数券・サブスクに対応した予約・決済システム比較にまとめています。まずは無料で使える範囲から試したい方は個人サロン向け予約システム無料おすすめ5選もあわせてどうぞ。
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回数券の法律まわりでよくある質問

Q. 回数券に有効期限を付けても問題ありませんか?
期限を設けること自体は広く行われています。ただし期限の長さや失効の条件が消費者にとって一方的に不利な内容だと、後から争いになる可能性が指摘されています。購入前にはっきり伝え、書面で残しておくことが何よりの予防策です。
Q. 期限が切れた回数券は、返金しなくてよいのでしょうか?
「返金不要」と言い切れるものではなく、規約の書き方や個別の事情で判断が分かれる領域です。実務では期限延長に応じる条件を決めておき、期限前に案内を送るなど「切らせない工夫」をしているお店が多く見られます。迷う事案は消費生活センターや専門家に相談してください。
Q. 届出が必要かどうかは、どこに聞けばいいですか?
前払式支払手段の届出は財務局が窓口とされています。会計・消費税の処理は税理士か所轄の税務署、お客様とのトラブルは消費生活センターと、内容ごとに相談先が分かれると覚えておくと迷いません。
Q. 回数券と月謝(サブスク)はどちらが管理しやすいですか?
管理のしやすさだけで言えば、毎月定額を自動で引き落とす月謝制のほうがシンプルです。一方、回数券はまとまった資金が先に入る点が魅力です。どちらも予約システム側で対応できるので、お客様の通うペースに合うほうを選ぶとよいでしょう。
回数券の設計と管理の仕組みは、セットで考えると迷いが減ります。freee予約にも無料から使えるプランがあるので、開業準備のうちに触っておきましょう。
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まとめ:回数券を作る前に確認したいこと
回数券は、資金繰りとリピートの両面で心強い仕組みです。難しく考えて導入をやめるのではなく、論点の在りかを先に把握しておくと、判断や相談がスムーズになります。
- [ ] 有効期限を決めた(お客様が無理なく使い切れる期間か確認した)
- [ ] 延長・返金・譲渡・紛失時のルールを規約に書いた
- [ ] 未使用残高を定期的に確認する習慣を作った
- [ ] 受け取った代金を前受金として記帳する準備をした
- [ ] エステ・教室など、業種特有のルールの有無を調べた
- [ ] 残回数を管理できる予約システムを用意した
- [ ] 判断に迷う点の相談先(税理士・財務局・消費生活センター)を把握した
この記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案について法的・税務的な判断を示すものではありません。金額の大きい回数券や長期の契約を扱う場合は、販売を始める前に専門家に一度目を通してもらうと安心です。
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